[資料] 調性 ― ポピュラー音楽 1
□ 多調性/多旋法性
YMO「nanga def?」
東京ザヴィヌルバッハ
D・リーブマン W・ショーター 他「ミスター・PC」
□ 機能和声×旋法性
チック・コリア・エレクトリック・バンド「キング・コックローチ」
マイルス・デイヴィス「ピノキオ」
□ 旋法を用いたジャズ 初期形
ジョン・コルトレーン「インプレッションズ」
□ 転調の複雑化
ジョン・コルトレーン「ジャイアント・ステップス」
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□ 多調性/多旋法性
演奏: YMO〔イエロー・マジック・オーケストラ〕
= 細野晴臣 坂本龍一 高橋幸宏
曲名: 「nanga def?」
CD: YMO『テクノドン』(東芝EMI、1993年)
6:10-
三全音と上下に素早く跳躍する音程からなる低音部に、五音音階の単純な旋律が重ねあわされる。また低音部と旋律とのあいだで不協和な衝突音が生じている。
一種の多旋法性は曲全体を通じてほぼ維持されるが、間奏部分と曲の末尾で旋律の音階に調和する三和音が和声的な脈絡なしに導入され、浮遊感のある終始点を形づくる。
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演奏: 東京ザヴィヌルバッハ
坪口昌恭(key, コンピュータ) 菊地成孔(sax)
三沢泉(perc) numb(ライヴ・エレクトロニクス)
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演奏: デイヴ・リーブマン(ss) ウェイン・ショーター(ss)
リッチー・バイラーク(p) エディ・ゴメス(b) ジャック・ディジョネット(ds)
曲名: 「ミスター・PC」 作曲: ジョン・コルトレーン
DVD: 『トリビュート・トゥ・ジョン・コルトレーン』(コロムビア、1999年)
曲はブルース〔ブルーズ〕の古典的なフォーマットをとるが、アドリブ・パートに入ると各奏者なりの仕方で調性から「アウト」する演奏が展開されていく。その結果、形式的に多調性・多旋法性に近い効果が生じている。
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□ 機能和声と旋法性の組み合わせ
演奏: チック・コリア・エレクトリック・バンド
チック・コリア(key) スコット・ヘンダーソン(g)
ジョン・パティトゥッチ(b) デイヴ・ウェックル(ds)
曲名: 「キング・コックローチ」
CD: 『チック・コリア・エレクトリック・バンド』(GRP、1986年)
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曲名: 「ピノキオ」(作曲:ウェイン・ショーター)
演奏: マイルス・デイヴィス(tp) ウェイン・ショーター(ts)
ハービー・ハンコック(p) ロン・カーター(b) トニー・ウィリアムズ(ds)
CD: 『ネフェルティティ』(コロムビア、1968年)
和声進行 解釈例(1コーラスは18小節で完結)*1
G♭M7 | G7 | G♭7 | G7 |
E♭mM7 | GmM7 | ||
Gm6 | F7 A7 | A♭7 | |
C♯m7 | Em7 | G7 | F♯7 |
F♯mM7 |
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□ 旋法を用いたジャズ 初期形
演奏: ジョン・コルトレーン(ts) エリック・ドルフィー(as)
マッコイ・タイナー(p)
レジー・ワークマン(b) エルヴィン・ジョーンズ(ds)
於ドイツ、1961年
曲名: 「インプレッションズ」
和声進行はマイルス・デイヴィス「ソー・ホワット」の旋法パターン(Dドリアン 8小節 → E♭ドリアン 8小節 → Dドリアン 8小節)をそのまま引用。
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□ 転調の徹底化
演奏: ジョン・コルトレーン(ts) トミー・フラナガン(p)
ポール・チェンバース(b) アート・テイラー(ds)
曲名: 「ジャイアント・ステップス」
CD: J・コルトレーン『ジャイアント・ステップス』(アトランティック、1960年)
ビ・バップのフォーマットを取っているが、変則的な(長三度進行による)転調が1コーラス16小節のあいだに10回生じており、高速のテンポとあいまって調性感の薄い(「コーダル・アウト」な)曲となっている。
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